令和4年3月
うまれては まづ思ひでん
ふるさとに
契りし友の ふかきまことを
法然上人『勅修御伝』
「私が浄土に往生したならば、まずは思い出すことであろうよ。故郷である娑婆世界で、共に極楽浄上に参ろうと約束した同行の深い真実の心を。」(伊藤真宏「法然さま二十三のお歌」〈浄土宗〉) という意味のお歌です。
世界中の宗教や思想の中には様々な来泄(死後)観が見られます。しかるべき時までの眠りであったり、偉大なるものとの合一であったりと。そんな中で、法然上人が説かれた浄士の教えは極めて具体的で、現在の生活や感覚の延長上のような極楽世界を説き示します。これは、法然浄士教の特色といっても良いかも知れません。
さて、法然上人は娑婆世界で約束し合った人々を思い出すことだろうとおっしゃっておられますが、同じように、私の祖父や祖母も私のことを思い出しているのだろうと想像ができます。いつもきちんとしていた祖毎は、「またそんな恰好して! 」と目をしかめていることでしょう。会ったことはありませんが、学問を志した祖父は私の矧識のなさに呆れているに違いありません。原稿を書いていて気が滅人ってきました…しかし、私もいつか極楽から子どもたちを思うときがやってきます。「風呂から出たらすぐに服を着なさい!」と。
(仏教学部准准教授 市川定敬)
「送仏偈」
(画:別科修了生 菊田水月)(製作協力:京都教区浄土宗青年会)
送仏偈
請仏随縁還本国 請じたてまつる、仏縁に随って本国に還りたまえ。
普散香華心送仏 普く香華を散じて心に仏を送りたてまつる。
願仏慈心遥護念 願わくは仏の慈心遥かに護念し、
同生相勧尽須来 同生相勧む尽く須く来るべし。
【この偈文は、善道大師の『浄上法事讃』下巻にあります。しかし「浄土法事讃」では、「品仏随緑還本国」の「請仏」が「諸仏」になっています。この偈文をお唱えしてお勤めするに当たって、初めの「四奉請」で道場にお招きした諸仏・諸菩薩をそれぞれの浄土へお送りさせていただき、私たちの毎日をお守りくださるようにお願いしましょう。】
(解説 宗門後継者養成道場長 稲岡 誓純)