Vol.9 保健医療技術学部 作業療法学科 山田 恭子(やまだ たかこ)
山田 恭子
保健医療技術学部 作業療法学科教授
※職名は取材当時のもの
プロフィール
大阪府生まれ。作業療法士の免許取得後、名古屋大学医学部にて医学博士号を取得。名古屋大学助手、星城大学リハビリテーション学部助教授を経て、平成18年4月から現職。著書に『障害臨床学ハンドブック』(分担執筆)がある。
佛大で教壇に立って、今年でちょうど10年。作業療法は私の人生そのものです。
―まず、先生の近況やトピックをお聞かせください。
昨年7月から今年3月まで9カ月間、大学の研修制度を活用してマレーシアで療育制度の調査・研究を実施しました。実は30年ほど前にJICA(国際協力機構)のプログラムでマレーシアのリハビリテーションセンターで作業療法士として働いたことがあります。その時のつながりで今回、マレーシア科学大学(USM)のリー・レイワ准教授をご紹介いただき、USMに近い障害児施設でも調査研究をする機会を得ました。独自の発達を遂げた同国の療育制度についていま論文をまとめ、学術誌に投稿中です。
大学では月曜日から木曜日まで発達系の作業療法学や作業療法学概論のほか実習の講義を担当しています。私は仕事が大好きですので、働いている時が一番幸せ。作業療法は私の天職だと思っています。
学外では、週末に愛知県の瀬戸市あさい病院でリハビリテーション課の顧問としてセラピストを指導しています。また、安城市の通園施設では作業療法を提供しながら、親子教室のアドバイザーも務めています。
―同窓生とのエピソードやお付き合いはいかがですか。
保健医療技術学部ができて10年、現在学部のある二条キャンパスが開設されて4年になりますが、この間に約130人の卒業生を送り出しています。卒業生は100%作業療法士になりますから日本作業療法学会など学会で顔を合わせる卒業生もたくさんいますね。
数年前に佛教大学発達研究会を立ち上げました。会員は関西の卒業生を中心とした7人程度ですが、年に一度集まって情報交換しています。また、京都とその周辺の卒業生が集まって、夕食会を開くのも楽しみの一つです。
卒業生は「図書館利用カード」の発行を受けられますので、二条キャンパスの図書館に寄ったついでに訪ねてくれる卒業生もいます。「先生の顔が見たかった」と言って、ぶらっと研究室に寄ってくれます。私は特定の学生たちと親密になることは少ないのですが、会いに来てくれるとうれしいですね。
―同窓生に対するメッセージや伝えたいことはありますか。
私は「継続は力なり」をモットーに学生に作業療法を教えています。志を立て、継続的に努力することで、道が開けると確信しているからです。ただ、作業療法は生活そのものを向上させることを大切にしていますが、意図することがあいまいになりがちで、その意義や役割を外部の人にう まく伝えるのが難しい。卒業生と話していて、理解してもらえず、悩んでいる人も少なくないと実感しています。そういう人には「10年間がんばれ」と言いたいですね。
10年間頑張ればスキルが身に付き自身もついてきます。作業療法が意味のある仕事なのだと自信を持って伝えることができれば、周囲の理解も深まると考えます。
また、作業療法学科の臨床実習は大変シビアな科目です。よりよい作業療法士を育てるために私たちも厳しく指導します。つらくて、泣き出してしまう学生がいるほどです。現役時代そんな卒業生たちが経験を積むと、やがて自分自身が実習生を教える立場になります。そして「臨床実習指導者の難しさがわかる」と言うようになる。「成長したな」とうれしくなる瞬間です。