令和5年5月
自己を愛する人は
他人を害してはならない
『ブッダ神々との対話ーサンユッタ・ニカーヤー』
国王「自分〈自身〉よりも愛しい人が、誰かいるかね」。王妃「いません あなたには、いらっしゃいますか」。国王「自分にとっても、自分よりも愛しい人はいない」。《以上 、要約》
国王がこの会話内容を釈尊へ告げた際、釈尊から次のように返されました。 「(前略)他の人々にとっても、それぞれの自己が愛しいのである。それ故に、自己を愛する人は、他人を害してはならない」と。
自分と置き換えた他者への対応、相手の立場に立つ―――一見、他者へ対する姿勢のみに思えますが、その言動は、実践者の人格を形成します。自己を育むための教えなのです。よって、釈尊の教えを単なる道理や理想とせず、自己の内面と言動が、その教えと一致するように努力を続けることが大切なあり方なのです。
国王へ返した釈尊の言葉から、周囲との依存関係を見つめ直し、共に愛しい自己を育みあう日々でありたく思います。
(宗教教育センター実習指導講師 法澤 賢祐)
『法然上人の絵物語』第三巻
(画:別科修了生 菊田水月)
第六段 慈眼房叡空のもとへ、法然房源空の名を授かる
皇円阿闍梨は勢至丸に天台宗の指導者を目指すよう説得しましたが、勢至丸の隠遁への意思は変わりませんでした。そして、久安六年九月十二日、十八歳で、西塔黒谷の慈眼房叡空の門をたたきます。叡空は勢至丸に出家の由来、隠遁の思 いを語らせると、「まことに法然道理の聖である」と喜ばれました。そ して、房号に「法然房」、実名に最初の師である源光の源と、叡空の空をとって「源空」という名を授けられました。
菊田 水月