平成29年10月
福不可徼。(福は徼むべからず)
『菜根譚』
中国明末の書『菜根譚』第七〇条(今井宇三郎訳注、岩波文庫、 一九七五、参照)には、「幸福」と「災禍」に対する心構えが 書かれている。ここには「幸福」は自分から求めて得られるものではなく、楽しい気持ちを育むことで、招き寄せるしかないと述 べられる。同じく「災禍」は自分では避けて通ることはできないので、殺気立つ心を取り除くことで、災禍を遠ざけるようにすべ きという。 今井氏の注釈にも述べられるが、『淮南子』(『淮南鴻列集解』下、 中華書局、一九八九)巻十八「人間訓」に「夫禍之来也,人自生之 ;福之来也,人自成之。禍與福同門,利與害為隣,非神聖人,莫 之能分。」とあり、禍も福も人間自らが招くもので、両者は分けられるものではないとする。 つまり禍も福も表裏一体であり、どちらを引き寄せるのも人間の心持によるというのだ。「幸福」は求めるものではなく、心楽しくあれば「幸福」な状態に自然となるのである。
(文学部教授 瀨邊 啓子)
仏教東漸 No.19
洛陽
白馬寺
白馬寺は、中華人民共和国河南省洛陽市の東にある寺院。インドから来た迦葉摩騰と竺法蘭の二人の僧が白馬に乗り、中国伝来最初の経典といわれる『四十二章経』を携え、洛陽を訪れたという説話に因んで、白馬寺と名づけ られました。『洛陽伽藍記』によると、北魏時代には後漢の明帝が建立した寺として記され、文献で確認できる伝承上では、中国 最古の仏教寺院といわれています。 写真は白馬寺の山門と白馬像。