平成29年11月

心の師となるも
心を師とせざれ

『涅槃経』

私たちの心には、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚という五つの感覚の門(ドゥヴァーラ)を通してさまざまな情報が入って来ます。「情報」は英語でいえば「インフォーメーション」ですが、その語はイン(内に)とフォーム(形成する)から成っています。そこには情報を統合して、その人の人柄や人格を形成して行く心という存在があります。仏教ではそうした形成のはたらきを担う者を、師とか主人とか上首とよぶのです。情報化の時代と言われる今日ですが、大切なことは情報の質を見極め、処理し、整理し、自己を生かす糧として統合することです。そこを疎かにすれば、信用を置くに足りない情報に振り回されたり、せっかくの情報を生かすことができません。日本語の「こころ」の語源説の一つに、「コロコロ(転々)」に由来するというのがあります。師や主人や上首が、その場の状況にコロコロ振り回されるようであれば、弟子も育たず、お客も遠のき、チームも強くなれません。心の師を置くことも育自と共育のために疎かにして はならないのです。

(仏教学部教授 藤堂 俊英)

仏教東漸 No.20
西安
大雁塔
雁塔は、中華人民共和国陜西省西安市の東南郊外に
あり、大慈恩寺の境内にあります。 大雁塔は、唐の高僧、玄奘三蔵がインドから持ち帰った 仏教経典や仏像などを保存するために、大寺院であった長安(今の西安)の大慈恩寺に建てた塔です。玄奘三蔵は 大慈恩寺の高僧で、この大雁塔の設計にも携わっています。 写真は大慈恩寺大雁塔。

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