平成30年2月
励まないで果報を望む者よ
汝は自滅の道をたどる
シャーンティデーヴァ『入菩提行論』
水の研究家小島貞男氏によれば、「川は自然に流れていれば浄化作用を発揮する。汚れた川の水も二〇キロメートルくらい流れれば、きれいになってくる。それは川底の石の表面を覆う微生物の膜が、浄化装置の役目を果たしているからだ」と言うのです。
吉野弘は「浄」の字が「水」から出来ていることを踏まえて、「流れる水はいつも自分と争っている。それが浄化のダイナミックス。溜まり水の透明は沈殿物の上澄み、紛いの清浄。河をせきとめたダム、その水は澄んで死ぬ。ダムの安逸から放たれてくる水は、土地を肥やす力がないと農に携わる人々が歎くそうな」と詩作しています。
励むとは生活の方向づけとなる目標を立て、その達成に向かって日々精進すことです。シャーンティデーヴァは「精進」の反対語として「自己の軽蔑」をあげています。励まずに果報を寝て待つ者は自滅の道をたどり、いそしみ励む者は自己を肥やし、その果報を自ら喜ぶだけでなく他からも喜ばれる、そのような道をたどれるのです。
(仏教学部教授 藤堂 俊英)
仏教東漸 No.23
チベット 六道輪廻図
青海省同仁(レプコン)のロンウ僧院のお堂の入り口にある「六道輪廻図」。通常の六道輪廻図とは違って吹き出しが付けてあり、念仏者が輪廻を離れ、白道を通って極楽往生をする様子が描かれています。極楽では阿弥陀仏が楼閣の中で説法をされています。