平成30年6月

そこにいる、その人自身を
見つめること。 それが「ほんとうの愛」の第一歩

『空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集』
寮美千子編(新潮文庫)  

 寮は、童話作家・小説家・詩人、そして奈良少年刑務所の子ども たちの「社会性涵養プログラム」講師。授業にはいろいろな子が 来る。見たこともないほど内気な子、逆に横柄で「オレサマに近づく なよオーラ」全開の子。どれもが「自己防衛の形」。その自分の心 を「隠すための固い殻」がはずれていくと、みんな一様に「かわ いく」なっていくという。ここでもっとも力になったのが、本人 が書いた詩を発表し互いに合評すること。その一つが本書の題名。  作者のA君が、この詩の朗読の後、教室の仲間の前で次のように 語った。「僕のお母さんは今年で七回忌です。おかあさんは病院 で『つらいことがあったら、空を見て。そこにわたしがいるから』 … それが最期の言葉でした。おとうさんは、体の弱いおかあさん をいつも殴っていた。ぼく、小さかったから、何もできなくて …
」 と。仲間も次々に感想を語りだした。「ぼくは、おかあさんを 知りません。でも、この詩を読んで、空を見たら、ぼくもおかあ さんに会えるような気がしました」と言ってワーッと泣き出した 子もいた。自分の詩がみんなに届いたことを感じたA君。いつに ない晴れやかな表情をしていた。  たった一行に込められた思いの深さとつながる心の輪。詩はその 子自身を見つめることであり、こうして心の「殻」は開かれると 寮はいう。同感である。 (社会福祉学部教授 渡邉 保博)

南伝 仏教南歩き No.3
ミャンマー
バガンは、ミャンマー・マンダレー地方にあり、旧名は パガン。カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアの ボロブドゥールとともに、世界三大仏教遺跡のひとつと称 され、イラワジ川中流域の東岸に、仏教遺跡が林立しています。 そのほとんどは 11 世紀から 13 世紀に建てられたものといわれ、 本来は漆喰により仕上げられた鮮やかな白色をしていますが、 管理者のない仏塔は漆喰が剥がれ、赤茶色の外観となって います。仏塔の数は、3000を超えるといわれています。  写真はバガンの仏教遺跡群。

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