平成30年12月
生有る者は、皆、前生の
父母なり
『今昔物語集』
仏教の戒の一つに「不殺生戒」があります。文字通り「生き物を殺すな」という戒めです。そして「なぜ生き物を殺してはならないのか」という理由の一つに「その生き物は、前世での父母が転生したすがたかも知れないから」というものがあります。この言葉は、そういった考え方を反映したものなのです。
しかし、よくよく考えてみると、生き物の命を奪わずに生きられる人はいません。誰しもが他の命をいただいて、自分の命を保っているのです。ですから、不殺生戒とは「『不要な』殺生はするな」という戒めである、と解説されたりします。
他の命を頂戴しないと生きられない私たちであるにも関わらず、「もっと食べたい」と要求しながら「こんなに食べられない」と食物を無駄にする、不要な殺生をしていないでしょうか。
食物だけではありません。あらゆるものを必要以上に求めたり、無駄にしないように努めるように、と戒めているのです。
(仏教学部教授 曽和 義宏)
南伝 仏教南歩き No.9
カンボジア アンコール・トム
アンコール・トムはアンコール遺跡群の1つで、12世紀後半ジャヤヴァルマン七世により建立されました。「アンコール」はナガラ(都市)、「トム」は「大きい」という意味です。
この遺跡には、ヒンドゥー教と大乗仏教の混淆が見られ、都市建築の基本は、ヒンドゥーの宇宙観を基に成り立った古代インドの建築理念の影響が見られ、中央にバイヨン寺院(仏教)があり、敷地内には巨大な観音菩薩が刻まれています。
南大門入口には、左右それぞれ54体の巨人の神像と阿修羅像があり、どちらも7つの頭を持つ蛇(ナーガ)の胴体を抱えています。
写真は、アンコールトムの入口にある南大門と石像。