令和4年1月

天下和順てんげわじゅん

『無量寿経』 

 今月のことば「天下和順」は、『無量寿経』の最後部分に出てくるもので、「天下和順てんげわじゅん 日月淸明にちがつしょうみょう 風雨以時ふうういじ 災厲不起さいれいふき 國豊民安こくぶみんなん 兵戈無用ひょうがむゆう 崇徳興仁しゅうとくこうにん 務修禮譲むしゅらいじょう」という経文の一節です。「(悟った人が赴くところでは、)世の中は平和で穏やかに治まり、太陽も月も清らかで明る<輝き、風や雨はほどよく吹きよい時に降るので、災害や疫病などもおこらず、国は豊かになり民衆は平穏に暮し、武器で争うこともなく、人々は徳を尊び互いに思いやり、礼儀を重んじ譲りあっている」と説き明かしています。
特に最後の二句「崇徳興仁 務修禮譲(人々は徳を尊び互いに思いやり、礼儀を重んじ譲りあう) 」は、私たちの目指すべき、ひととしてのありようを示していると言えます。
しかし実際の自分の姿はどうでしょうか。心の中では人に対して妬んだり蔑んだり、自分の利益ばかり考えたり、無礼であったり、何よりも自分優先で、我先に何かを求めたりしてはいないでしょうか。
年頭にあたって、まずはじっくり自己を見つめる時間を設けて反省する姿勢が必要であると実感します。一人一人が徳を尊び、他者を思いやり、礼儀を重んじ、互いに譲り合うことを心掛けるならば、きっと天下も和順(平和で穏やかな状態)となっていくことでしょう。そのような姿を目指す一年でありたいと思います。
(学長 伊藤真宏)

「総回向偈」
(画:別科修了生 菊田水月)(製作協力:京都教区浄土宗青年会)

  総回向偈そうえこうげ
願以此功徳がんにしくどく  平等施一切びょうどうせいっさい  ねがわくは功徳くどくもって、平等一切びょうどういっさいほどこし、
同発菩提心どうほつぼだいしん  往生安楽国おうじょうあんらっこく  おなじく菩提心ぼだいしんおこして、安楽国あんらっこく往生おうじょうせん。
【この偈文は、善導大師ぜんどうだいしの「観無量寿経疏かんむりょうじゅきょうしょ」の冒頭「十四行偈じゅうしぎょうげ」の最後十四行目の偈文てす。法然上人は「三部経大意さんぶきょうたいい」に「浄土宗の心は浄土に生まれむと願うを菩提心と云へり」と仰せられているように浄土に生まれたいと願う心(願往生心がんおうじょうしん)を菩提心と捉えておられます。浄土宗の教えは、極楽往生した後に悟りを目指そうという願いです。念仏の功徳をすべての人に振り向け極楽浄土へ共に往生できるように願いましょう。因みに「開経偈かいきょうげ」からこの偈文の後の「十念」までが正宗分しゅうじょうぶんです。】
(解説  宗門後継者養成道場長 稲岡 誓純)

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