令和4年2月
雪のうちに 仏の御名を 称ふれば
つもれるつみぞ やがてきえぬる
法然上人『勅修御伝』
「雪が降ると静かに感じる」と言われることが多いようです。雪は雨とは違い、はげしく降っても音がしません。気がつかないうちに、一面の銀世界となっていたという経験をしたことがある人も多くいらっしゃるでしょう。
この歌の、上の句の「雪」は、下の句の「つもれるつみ」を喩えています。私たちも、輪廻を繰り返しているあいだ、気づかないうちに罪を犯し、悪業を租み重ねています。
その様子を、気づかないうちに静かに降り積もる雪に隙えているのです。
そのように深く租み重なった罪であっても、阿弥陀仏の光明に照らされることによって、やがて消え去っていきます。『無厳寿経」には「阿弥陀仏の光に触れると煩悩が消滅する」とあり、『観経」には念仏を称えれば罪が消滅するとあります。念仏を称
えれば、阿弥陀仏の光に触れることができ、そして罪が消え去るということが、容易に理解できる歌です。
(仏教学部教授 曽和義宏)
「総願偈」
(画:別科修了生 菊田水月)(製作協力:京都教区浄土宗青年会)
総願偈
衆生無辺誓願度 衆生は無辺なれども誓って度せんことを願う。
煩悩無辺誓願断 煩悩は無辺なれども誓って断せんことを願う。
法門無尽誓願知 法門は無尽なれども誓って知せんことを願う。
無上菩提誓願証 菩提は無上なれども誓って証せんことを願う。
自他法界同利益 自他法界は利益を同じくし、
共生極楽成仏道 共に極楽に生じて仏道を成ぜん。
【この偈文は、恵心僧都源信の『往生要集』巻上にあります。天台大師智顗の『摩訶止観』第五巻上に、「四弘誓願」として前の四句と同様の「衆生無辺誓願度、煩悩無数誓願断、法門無量誓願知、無上仏道誓願成」と云う偈文があります。法然上人は『選択集』第三章に総別二願の総願として「四弘誓願」を立てておられます。すべての仏は「度、断、知、証」の「四弘誓願」を発しています。念仏の功徳によってみな共々に極楽に往生して仏道を歩めますように願いましょう。この偈文から「送仏偈」・「十念」まては流通分てす。】
(解説 宗門後継者養成道場長 稲岡 誓純)