令和4年4月


世の中の常識は疑え

田原総一朗『朝日新聞』二〇一〇年三月二十八日付朝刊 

 このタブーに切り込むジャーナリストは、かつて軍国少年だったという。しかし、国民学校5年で敗戦を迎えると、目の前で社会の価値観が大きく転換「お国のために戦って死ね」と教えた教師も、新聞もラジオも百八十度変「あの戦争は間違いだった」といって御真影を焼いた。「仰い人の言うこできない」「世の中の常識は疑え」これが、このジャーナリストの原点となった。
現代にあっても世の中は疑わしいことばかりだ。規制緩和は本当に幸せをもたらすのか。生活困窮は自己責任か。事件が起きれば個人が裁かれるのみ。それらは社会的に規定されていないだろうか。個人の資質を問うならば、それは逆に個人の責任とはいえない。そもそも意志を行為の出発点にするような考え方は非科学的ではないか。
日本は豊かな国と言われてきたが、私は餓死する人たちを実際に見てきたし、路上で凍死する人も後を絶たない。これは誰のための社会か。
目の前の事実から常識は疑ってみよう。それが大学で学ぶということでよりよい社会をつくる第一歩だと思うんですよね。

(社会福祉学部教授 村上武敏)

『法然上人の絵物語』第一巻
(画:別科修了生 菊田水月)

第一段 母秦氏の懐妊
法然上人のご両親は仲睦まじく、そして大変信心の深い方でありました。子供がいなかったお二人は、子供が授かるようにと心を―つにして佛神に祈りました。すると、ある日、母秦氏かみそりを呑む夢を見て懐妊されます。父時国公はその夢の話を聞いて、「お腹の子は将来、朝廷の戒師となるだろう」と仰ました。
菊田水月

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