令和4年7月
心を修めたならば
安楽をもたらす
『ダンマパダ』No.35
ブッダは、人間の心の中には「無明」という貪欲(むさほり執着すること)・瞋恚(気まま次第に怒ること)・愚痴(ものの道理が解らない)の三毒煩悩があり、これが執着の心を起こして苦しみを生むのであると教えられている。人間の迷いである苦しみを解決するには、外的な煩悩の原因を取り除くだけでなく、それに対応する内的な心の中にある煩悩を取り除かねばならない。
仏教では、苦しみの原因を滅した涅槃に到る方法として八正道(正見・正思・正語・正業・正命・正精進・正念・正定)が説かれる。正見とは正しい認識(智慧)であり、正思からはいかにすれば正見が実現することができるかを具体的に示したもので、正思は正しい考え方(意業)、正語は正しい言葉(口業)、正業は正しい行為(身業)、正命は身ロ意の三業による正しい生活、正精進は正しい生活をし続けるための努力、正念は正しい生活のための注意力、正定は正しい精神統一である。 このように八正道を行って、苦しみの根本原因である煩悩を滅して「さとり」に到達するのである。
(仏教学部准教授 稲岡誓純)
『法然上人の絵物語』第一巻
(画:別科修了生 菊田水月)
第四段 定明の夜襲
保延七年の春、時国に恨みを抱いていた明石源内武者定明が夜討ちをかけてきました。この時、勢至丸少年は物かげから定明めがけて小矢を射かけます。
その矢は見事、相手の眉間に的中し、驚いた定明は額から血を流しながら逃げ去りました。勢至丸少年のこの勇敢な行動は人々に称賛され、「小矢児」と呼びはやされて語り伝えられました。
菊田水月