令和元年11月
過ぎ去るものは
虚妄なるものである
『スッタニパータ』ブッダのことば№757岩波文庫
過ぎ去るものとは、時間経過や周囲の変化のことだけではありません。物質が織りなす現象、物質そのもの、我々も含むすべてに実態が無く変化することを指します。この現実を虚妄(いつわり、仮りのもの)と見極め、あり方を縁起と言い、あるがままの真実と言うのです。そして、名称と形態に執われることを否定する。このような論理と視点が、仏教思想なのです。
一方で、名称と形態を定めなければ、現実生活は成り立ちません。では、この過ぎ去る虚妄なる縁起の中にある、縁起の我々がどのように生活し、生きてゆくのか。いざ、この問いと向き合い、実践することが大切なのです。そのための日常と考えると、停滞している場合では無いのと同時に、前向きになれることに気付きます。
すべては過ぎ去るものと知ること、虚妄なるものと見ること、その上での前向きな実践力。すなわち「身と口と心のはたらき」を自身で育む必要があるのです。さあ、仏教思想の探究と実践の始まりです。
(仏教学科准教授 稲岡 誓純)