令和元年5月
つらいとき、悲しいときでも、
「好きなこと」をしている感覚が、あなたを守る。
『自分を休ませる練習』矢作直樹著 文響社
「自分を休ませる練習」の著者である矢作直樹氏は、長年、救急医療の最前線で活躍された医師として、数多くの生死の場面に立ち会ってこられました。本書は矢作氏のそうした経験を通して生まれた著書の一つです。
矢作氏は、人間の五感にある「抽出力」を磨く必要性を述べています。「抽出力」とは、五感を通じて入ってくるたくさんの情報の中から、ある音、ある映像、ある匂い、ある温度、そんな特定のものだけを自分が選び取る能力のことです。この「抽出力」を磨くことで、自分が「不快だ」と感じるものを自然と自分に取り込まなくなるメリットがあると説明しています。
自分がつらい感情やかなしい感情に支配されていたとしても、自分の「好きなこと」をしているその瞬間は、そのことに集中したり、無心になったりしており、五感の「抽出力」が高まり、自然と自分が「不快だ」と感じるものを取り込まないようにしているのです。そうして自分自身の心を守っているのではないでしょうか。
自分の「好きなこと」、「好きなもの」への感度を高め、すべての人に備わっている五感の「抽出力」を磨きましょう。
(保健医療技術学部教授 浜崎 優子)