令和元年7月

数を定めぬは懈怠の因縁なれば、数遍を勧むるにてそうろう。

  法然上人『一百四十五箇条問答』  

 この言葉は、「日々念仏を称えるにあたり、六~十万回称えることと、一回一回を丁寧に二~三万回称えるのとどちらが良いでしょうか」という問いに、法然上人がお答になったものです。法然上人は、「私達のような凡庸なものには、二・三万回を丁寧に称えても、法にかなうような念仏はできません。必ずしも数が重要ではありませんが、常に念仏し続けるためです」として、この「数を決めておかなければ、怠ける原因となってしまうので、数多く称えることを勧めるのです」という言葉でもってお答えになりました。
日本のサッカー選手に中山雅史(ゴン中山)という選手がいます。日本代表をワールドカップ初出場へと導いたフォワードで、国際試合での最短ハットトリックのギネス記録保持者です。二〇一六年まではJリーグ最多得点、ハットトリック連続世界記録も彼のものでした。しかし、プレーについては、決して上手い選手としては評価されないようです。卓越した技術はなくとも、彼は常にゴールを意識して誰よりもシュートを打ち続けました。それが数々の記録として現在まで残っている訳です。
一つ一つがそれなりであったとしても、常に意識して数を重ねることの重要性が知られます。
(仏教学部講師 市川 定敬)

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